段々、薗田さんと会う時間が迫ってきた。
仕事も終わり、自転車に乗って駅に向かう。
時刻は、17時30分。
待ち合わせは、18時。
このまま、自転車を止めて、電車で二駅だから間に合うな。
すると…途中で…
「太田さん…」
「あっ、のっぽさん…」
「どうされたんですか?」
「忘れ物を…」
「あっ、うさぎのお人形?」
「そう!」
「ありましたよ。宝ちゃんのですね」
「そうなんだ。宝、あれがないって大泣きして…」
「私、取ってきますね」
「あ、申し訳ない…帰るんじゃ?」
「大丈夫ですよ。じゃ、行ってきます」
やっぱり、宝ちゃんのだったんだ。
私は、お人形を取りに行き、太田さんに渡した。
太田さんって、無神経で、ちょっと偉そうで、敬語が使えなくて、私の苦手なタイプの人だと思ってた。
でも最近、優しいところとか、誠意があるところとかがあって、見方が変わってきた。
「のっぽさん、ありがとう」
「いいえ、よかったです」
「でも、いつ落っこちたんだろ?」
「たぶん、宝ちゃんが眠ってしまって、おんぶしている時じゃないですか?」
「そっか…気づかなかったな」
「じゃあ、私これで失礼しますね」
「何か用事でも?」
「は、はい…」
なんだか恥ずかしくなって、太田さんから、目を逸らし、顔が赤くなっているのが自分でもわかった。
「男?デート?」
「いや…あの〜」
しどろもどろになってしまった。
「あっ、もしかして、この前の合コンの?」
「合コンじゃないです。婚活パ…あっ…」
「え?あれ、婚活パーティーだったんだ」
「いや、その、あの、えーと…」
「その時の男だ」
「もう!あなたは、いつも無神経過ぎます!ほっておいてください!」
私は、急に怒ってしまい、駅まで自転車を走らせ、その場をあとにした。
気持ちを切り替えようと、駅のホームで深呼吸を何度もした。

