健一は、昨日佳祐に言われたことを思い出していた。


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「健一、帰りに俺の家に来い!話がある」


そう言われて健一は、いつもとは逆方向の佳祐の家へ連れていかれた。

佳祐の部屋は、雑誌などが散らかっていてお世辞にもきれいとは言えなかったが、健一にとっては居心地はよかった。


自分がなぜ連れて来られたかはわかっていた。


そして佳祐からは予想通りの言葉を投げられた。


「お前、岡崎ちゃんに何した?」


真っすぐな目付きで言われると、男の健一でもドキドキしてしまう。


いや、ドキドキは健一に後ろめたいことがあったからである。



「あいつから聞いてないんか?」


健一は、自分の失態を口に出して言うのが嫌だった。



知っているなら、聞かないで欲しかった。


「聞いてない。美穂が岡崎ちゃんの前でお前の名前を出したら、急に怒り出したらしい。だからそれ以上は聞けなかったって・・・」


―――やっぱり・・・口に出すのも嫌なんやろうな・・・。


「で、何をした?」


健一は、俯いていても、佳祐が鋭い視線を向けているのがわかったので、話しにくかった。


しかし健一は、自分が話すまで佳祐は納得しないだろうと思ったので、話すことにした。


「・・・キスしてしまった」


消えそうな小さな声から出された言葉によって佳祐の表情がどのように変わったのかは、俯いていた健一にはわからなかった。


「えーっ!」


健一の言葉に驚いた佳祐は、目を真ん丸にし、部屋中に響く声で叫んだ。


「・・・・・・」


「無理矢理したんか?」


「あ、あほ!そんな襲うようなことはしてない!」


「じゃあ、合意の下で?」


―――合意・・・してないな・・・。


「・・・・・・」


「やっぱり嫌がる岡崎ちゃんに無理矢理・・・」


バンッ



健一は、床に落ちていた雑誌を佳祐向けて投げ付けた。


「痛ったぁ!!」


佳祐は、頭を押さえ、顔を歪めながら、続きを聞こうとしていた。