―――うわぁ・・・学校行きたくないし・・・。


杏子は、健一に会うのが嫌で、学校に向かう足取りが重くなっていた。

また、以前のように追い掛けられるのを予想して、始業時間ギリギリに学校へ向かった。


学校に着くと、いつもの騒がしい廊下と教室にホッとする自分がいた。


教室のドアの前に立つと、深呼吸をし、いつものように振る舞おうと決め、教室に足を踏み入れた。


すぐに目に入ったのは、健一の席に群がる女子。


騒がしい教室では杏子一人が入って来たところで、誰も気に留めることはない。


自分の席に向かうと、他の子と話していた美穂が自分の方に向かって歩いてくるのがわかった。



―――お願い、何も聞かんといて。


そんな杏子の願いも虚しく、美穂は健一の名前を出した。


「眞中くんとはどうなったん?」


杏子が抑えていたものが一瞬で弾け飛んだ。


「あいつの名前は出さんといて!」


杏子の表情は、きっとこれまでに見たことのない冷たいものだった。


美穂は言葉を失っていた。


そして、視線を感じたので杏子が隣を見ると、二人のやりとりを聞いていた黒谷も驚いていた。



さすがの美穂もそれ以上は聞くことはできなかった。