「ブレット......、ミスター......」



迷いのない足取りで歩く彼の後ろから、何て呼びかけたらいいのか分からず、小声で背中に声をかけていると、ブレットさんはピタッと足を止めて、こちらを振り向く。



「ブレットでいい。
ブレット・ウィリアムズだ。

......名前を、聞いてなかったな」


「名前?あ、私の?
ミナ。ミナ・ナカガワ」


「ミーナ、な。分かった」



微妙に名前違うんだけど......。
まあ、いいか。



「それで、ブレット。
今からどこに行くの?」


「焼き肉。
腹減ってるだろうからって、アキから頼まれた」


「千明が?
千明はこないの?」


「後からくる」



それきり会話が途絶えて、また歩き始めたブレットの少し後ろを歩く。

千明の提案らしいけど、千明はいつくるんだろう。

二人きりだと英語得意じゃないし、会話が続かない。それに、ブレットと二人だとなんか気まずいというか、緊張する。


また会いたいとは思ったけど、昨日の夜のこともあるし、実際会うとやっぱり複雑。