死を覚悟したけれど、ブレットは私を攻撃しようともしなければ、一言も言葉を発しようとしない。

ただ黙って私を見つめるだけ。


どうしたの......?



「まだ殺してないの?
早くやりなさいよ。

そうすれば、あなたの大好きなヒーローになれるわよ。
病気の人を助けたいんでしょ?」



ブレットに声をかけようとすると、リンレイの楽しそうな声が聞こえてきて、驚きのあまり後ろに手をつく。



「あ......」



勢いあまって、救助信号のボタンを押してしまった。


......。

押してしまったものはもう取り消せないので、リンレイに見つからないうちに後ろ手で暗証番号を押し、再びボタンを隠す。



「やっぱりやれないのね?
あなたは最後まで細菌兵器に反対してたわね。

チームの任務を果たしながらも、その子は助けたいなんて都合が良すぎるのよ」



何も答えないブレットに、やっぱり楽しそうに小刀をクルクルと回すリンレイの手元を見ながら、固唾を飲んで展開を見守る。
  

ブレットは、私を助けたいと思ってくれたの?