「無事に地球に帰れたら、伝えたいことがある」


「......今じゃだめなの?」


「今伝えたら月に行くのが嫌になりそうだから、帰ってからにしてほしい」



私も言いたいこと、あったのに。
地球に帰れたらじゃなくて、今言いたかったのに。

そんなこと言われたら、言えなくなっちゃうよ。


ブレットのブルーの目をじっと見ると、私を抱きしめる腕の力が強くなる。


ねえ。
伝えたいことって、
私の言いたいことと同じだって、そううぬぼれてもいいの?


キスされて、思わせぶりなこと言われたら、私期待しちゃうけどいい?



「......じゃあ、意地でも生きて地球に帰って、ブレットの話を聞かなきゃね」



何かはっきりとした言葉をもらったわけでもないし、特別な約束をしたわけじゃない。

任務よりもチームよりも、私が大事だと言われただけじゃない。


でもいいんだ。
私って、単純みたい。

これだけで十分だって思っちゃうんだよ。
キスされて抱きしめられて、これだけのことで、絶対に生きたいって思えるんだよ。


私たち、一緒に地球に帰れるよね......?
どうか戻ってこれますように。

不安な気持ちを隠すように、ブレットの背中にそっと手を回した。