部屋の中に入ったブレットは、マタタビにじゃれつくライオン、床に倒れるボロボロの女の人というカオスな状況に一瞬固まった。

けれどそれにはノーコメントで、床に落ちているたくさんの丸い実を避けながら、檻に直行。


ハラハラしながら鍵を開けるのを見守ると、カチャリと鍵が合う音がして、ドアが開いた。


最初はキョトンとしていた表情を浮かべていたこどもたちもすぐに泣き顔に変わり、檻から走り出てくる。



「もう大丈夫だよ。
悪い人はお姉ちゃんとお兄ちゃんがやっつけたからね」



泣きながら私に抱きついてきた女の子を、しっかりと両腕で抱きしめて、背中をなでる。


ブレットの方を見ると、彼の回りにこどもたちが集まっていて、リラックスしたように笑いながらこどもたちの頭をなでていた。


......あんな表情、初めて見た。
ブレットって、こども好きなのかな?

めずらしいもの見たかも。



「ブレット、良かったね。
こどもたちのヒーローになれて。
ヒーローになりたいんだよね?」



一番に良かったことはこどもたちを助けられたことだけど、そういえば以前ブレットが言っていたことを思い出し、嫌味でもなんでもなく笑顔で声をかける。