「よく知らないけどさ、資金だけ手に入れて終わりじゃなくて、その後が肝心なんじゃないの?

やることがいっぱいあるって、自分で言ってたじゃん。
村の未来は、他のやつに丸投げ?」



何も口に出せなかった私の代わりに、寝ていたはずの千明が、外を見ながら口をはさんだ。

茶化すような言い方に、ネリが真剣に話してるのにとさすがにムッとしてしまう。



「あのね千明、ネリがどんな覚悟で言ったと思う?
何も知らないのに、そんな言い方ないでしょ」


「そうだよ、何も知らない。
知らないけどさ、俺はネリに死んでほしくない。死ぬよりも、生きて帰る方がいいだろー?

何より、ネリが死んだら俺が嫌だ!」



私が言いたくても言えなかったことを、千明は何でもないことのように、軽く口にする。


それは生きて帰れるなら、みんなそっちの方がいいに決まってるよ。
でも、全て思い通りに上手くいくことなんて、なかなかない。

まだ二十年も生きていない私でも分かる。

分かっていないことが多い宇宙人との戦いに、絶対に生きて帰れる保証なんてない。


けれど、だだっ子のような千明の言い分に、ネリの表情がほんのすこしだけやわらいだ。


......どうしてなの?
どうして、千明は私の越えることのできないハードルを、いつも簡単に越えることができるんだろう。