「じゃあ、月での戦いに絶対に勝って帰らないと、ね」


「......。
俺は、生きて帰れなくても構わない。
資金さえあれば、村の未来への希望が繋がるんだ。俺が戦いに参加さえすれば、資金が入る。

死んでも生きていても、資金さえ手に入ればどっちでもいい」


「ネリ......」



一切の迷いもなく、ネリはそれを口にする。


何も、言えなかった。

死んでても生きててもどっちでもいい、なんて言わないでほしい。

けれど、とてもじゃないけど、そんなこと言えない。


私とは背負っているものの重さも、覚悟も、育った環境も違いすぎる。


病気にさえならなければ、死ぬことなんて遠い先のことだと思っていた私。

明日の食べるものさえもあるのかどうか分からなくて、きっと常に死を意識して育っただろうネリ。


私なんて自分のことで精一杯で、自分が死ぬって言われたら、自分のことしか考えられないのに。

想像することしかできないけど、ネリは私よりもずっと厳しい世界で生きてきたんだ。

それでも、未来だけを信じて生きてきたんだ。
自分の命を捨てる覚悟までして。


何不自由なく育った私が、ギリギリのところで生き抜いてきたネリの覚悟に何か口を出すことなんて、できない。