十二月になり、街ではクリスマスのイルミネーションが光り輝くようになった。
学校で期末試験が行われていて、春奈は途中で考えたり悩んだりする事も無く、スラスラと問題を解き続けていた。
どの教科でもどの教科でも、春奈はスラスラと問題を解き続けていた。




その日の放課後、春奈は授業のノートを提出する為に、クラスの女子全員のノートを、出席番号順に並べ変えていた。
そこに翼が、順番がゴチャゴチャな男子全員分のノートを持ってきた。


「長山。コレ全部を出席番号順に並べ変えて、女子の分と一緒に提出しといて」


そう言った翼は、男子全員分のノートを、ドサッと春奈に差し出す。
本来なら、男子全員分の出席番号順に並べ替えて、提出するまでが、翼の仕事だ。


「分かった。コレ全部やっとくね」


春奈は翼から嬉しそうにノートの束を受け取った。
翼の"面倒な作業を押し付けて、嫌がらせする"という嫌味――というか囁かな復讐は、春奈には伝わらずに、"山本君に頼られてる"と変換されて、春奈に伝わった。
お互いに、自分の想いが、悲しみが、相手に伝わる事は無い。そしてそれは、とんでもない誤解を生み出すだけだった。





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