文化祭も終わって、三年生達は真剣に高校受験の心配を始める。
秋も深まった十一月中旬の日の放課後、静華は一人で教室に残って、英語の受験問題の過去問題集を解いていた。
すると春奈が静かに、教室に入ってきた。
静華は春奈に気付いたのか、パッと顔を上げる。


「出てって」

「え?」


急に叫ばれた春奈は意味が理解出来ずに、立ち止まって静華の顔を見た。
そんな春奈に静華はさらに苛立ち、大声で怒鳴る。


「良いから出てけ!」


怒鳴られた春奈は首を傾げながらも、何も言いかえす事が出来ずに、そのまま教室を出て行った。
静華は春奈が教室を出て行き、見えなくなるのが分かってから、英語の過去問を再開した。

静華にとって兄の敵である春奈には、出来るだけ近くに居て欲しくなかった。
授業中や普段の学校生活では仕方無いと我慢していたが、放課後の集中してる時間に二人っきりになるなんて、絶対に勘弁して欲しかった。
静華にしろ翼にしろ、春奈への恨みと怒りは、日に日に増していくばかりだった。





春奈は疑問を抱えたまま、下駄箱で靴を履き替えていた。
春奈には昔の記憶が基本的には無い為、行った事が無い筈の××遊園地の光景が脳内に浮かぶ事も、翼と静華の態度も、春奈には疑問でしかなかった。





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