焦る自分を押さえて、
ドアを開けてまず俺を出迎えたのは

…もあん

と、なんとも言えない生暖かな空気だった。

なんだこれ…



確かに昨日も今日の朝も気温は高く、

部屋が暑いことなんてそんな不思議なことでもない。


しかし人が一晩過ごすには暑すぎる。


奈々がそんな寒がりだとも思えない。



まさか…帰ってない??



いや、そんなことはない。

玄関には奈々の靴とカバンが
無造作にではあるが存在していた。


家には着いている。


しかしなんだろうこの胸騒ぎ。


いつもなら


おかえりーっ


と、アホみたいに嬉しそうな顔してパタパタと迎えに来る。

それが、
ただ蒸し暑い玄関はしんと静まり返っていた。


何かが俺の中で騒いだ。




…奈々?



鍵など閉めることも忘れ、

俺は奈々が寝ているであろう寝室へ急いだ。