中学3年の冬────
【今から五ヶ月前】
「燐(リン)くん…ちょっといいかな…??」
「………は??」
午前中の授業が終わって、昼飯も食った後
余った時間を昼寝して過ごそうと思っていた俺に、女が話しかけて来た
…せっかく人が寝ようとしてんのに
昼寝を邪魔されて、いつにもまして俺はイラッとした
しかも、話しかけて来たのは杉本美香(スギモトミカ)
くるくるの茶色い巻き毛に大きい目、学年中の男子から騒がれている女
ちょこんとカーディガンから出した手に、俺が[頷く]事が当たり前だと思っている様な高圧的な態度
…俺の大嫌いなタイプだ
だがめんどくさい事に、この手の女はとりあえず従っといた方が後々楽なのだ
俺はしょうがなく頷いた
「わーい♪ありがとぉ♡…じゃぁー、ちょっと屋上まで来てくれる??」
…吐きそうだ
最後にはご丁寧にきゅるん、と上目遣いまでしている
何でこの手の女は自分が気色悪い事をしてる事に気付けないんだろうか
「美香ちゃんちょーかわいい…」
「な…まじやべーよ」
クラスの男どもの声がここまで聞こえてきた
…なるほど、こういうアホがいるからか
俺は溜息をひとつして屋上へ向かった
…さっさと終わらして寝よう