「ちーくん!!……ゆ、夢?…また、か…」
目覚めの悪い朝、悪夢をみて汗が全身からびっしょりとでていた。
何回目だろうか…この夢を見るのは。
実際に起こったことじゃないけどなぜか同じ夢を見る。
「…ちーくん…会いたいよ…」
小さい頃から好きだったちーくん。
生まれたときからずっと一緒だった。
私にとっては王子様のような存在。
だが、小学校2年のとき私のお父さんの仕事が転勤することになり転校しなければならなかった。
悲しくて寂しかったけど、ちーくんと私の約束があった。
「離れても文通しよう」
月1回は手紙を書いた。
お母さんにいつも「お手紙まだ?」って言ってたっけな…
来たときはぴょんぴょん跳ねて喜んでたな。
何度も読み返してたな。
だけど大きくなるにつれ手紙が来なくなった。
どうして?なんで?
つまらなくなったのかな、嫌いになったのかな。
ネガティブにそう思ってしまう。
「はあ、いつまでもこんなこと考えるのはやめよう。今日は入学式なんだから!あこがれの桃花学園にやっと合格したんだから」
高校は8年前に住んでいた街にした。
ちーくんがいる街だからもしかしたらって…
ベッドから降りて壁に掛けてある真新しい制服を見る。
今日から通うことになる桃花学園は親戚の叔母さんが経営しているマンモス校だ。
校訓が自由、個性、創造で皆個性豊かに自分の好きなスタイルでのびのびと学校生活を過ごしていると去年のオープンキャンパスのとき叔母さんに聞いた。
敷地がものすごく広くて校舎がお城みたいでびっくりした。
ちなみに、桃花学園は4年制となっている。
私は家から遠いから敷地内にある寮に住むことになった。
独り暮らし楽しみだな~なんて思って。
うふふ♪
あ、そだ汗かいたからシャワー浴びてこよ!
ダッシュでお風呂場にいきシャワーを浴びて部屋に戻ってきた。
髪を乾かした後、真新しい制服に身を包み、鏡でチェックする。
制服は規則でブレザーとスカートだけだから水色のシャツに青色のリボン、紺色のハイソックスを合わせてみた。
そして真っ黒な胸まで伸ばした髪を緩く巻き、ナチュラルメイクをした。
「うん…よし!」
チェックを終わると朝食を食べにリビングに行く。
「おはよう、お母さん」
キッチンで朝食の準備をする母に声をかけた。
「あら、おはよう妃奈。ご飯できてるわよ」
朝食を並べて椅子に腰かける。
「あれ?お父さんは?」
「お父さんなら今日から海外出張よ。お父さんから伝言頼まれて頑張ってこいよ、ですって。あ、荷物はもう寮に運び終わったそうよ。寂しくなるわね…妃奈は4年は学校だし、お父さんは出張だし…いいもん!るると仲良く暮らすから~」
るるとは家で飼っている愛犬だ。
「あはは、休みの日はときどき帰って来るからさ」
「あら、そう。じゃあお土産よろしくね~」
まあったくのんきな母だ。
朝食を食べ終わった後、歯磨きをしてるると遊んだ後お母さんと家を出た。
「緊張するわねー。ねえ妃奈、お母さんどこもおかしくない?」
「大丈夫だよ。それに緊張するのは私の方だよ」
「そうね、頑張って来なさいよ?」
「うん」
黒いスーツに身を纏ったお母さんはきれいだ。
よくお母さんとショッピングしていると姉妹に間違われる。
私はそれが嬉しい。
そして車で約一時間ー