「迎え入れる婿は隣国の山賀(やまが)の国の藩主、林下家の次男月斉(げっさい)殿じゃ。婚礼の儀は三月後とする。 じい、支度は任せた。ぬかりなきようにな。」 「は、ははッ!」 言いたいことを全て言い終わるとダンダンダン!と足音高く鯨達は大広間を後にした。 「...えらいことになりましたのォ姫さま..いやはや、殿様には敵いませぬ...」 そう言ってしきりに頭を掻く岬平。 小さな口を真一文字にきゅっと結んで前を見据える百合。 百合はこの大広間で終(つい)ぞ一言も喋らなかったのである。