もう夏に差し掛かろうとしている時期だからか、屋上に人気はない。


地面には、俺と拓巳の影だけが落ちる。



「メシは? もう食った?」


「おー食ったよ。 秋は? まだ食べてないだろ」


「……ん。 でも今日はいいや。 どうせパンだけだし」



メシを食うくらいの時間はあるけど、いまから教室に戻るのもだるい。


それに、食欲もあんまりない。



手すりにひじを乗っけて、ぼんやりと遠くの景色を見る。



「河北ちゃんのこと、もういいのか?」


「…………」



いいわけ、ない。


未練なんか……かっこ悪いくらいある。