私と彼と――恋愛小説。

あの日――佐久間に見せられたnoxの第六話。


"Beautiful Dream"


作者名は〈大友 カヲル〉


そこには全てが綴られていた。売れない小説家の父親に悩まされる家族。父親を、そして小説を憎む弟。


二人きりになった生活の中で、彼女は言葉を綴ってゆく。それすら弟には言えなかった。


やがて彼女は運命の彼に出会い、名前も変えた。


病に倒れ、余命を宣告された彼女の為に彼は名誉も仕事も捨てた。その日迄を供に過ごす為に――


彼女は彼に忘れていた夢を語る。


「きっとね、私の小説が売れたりして映画にでもなれば…あの子も小説を見直すかも知れないわ。そうしたら――父親の事も少しは良く思ってくれないかな？」


彼女が想いを告げたのは最期を迎える時だった。


「父さんの事、許してあげてね…」


そうして〈カヲル〉はこの世と別れを告げた。