私と彼と――恋愛小説。



『姉さんの名前は…薫。原稿に残ってたのはカヲルだった――』


スクリーンから全ての文字が消え…


一回りだけ大きな白い文字が下から現れた。


漆黒に白い文字…


その文字がゆっくりと中央へ差し掛かる。




〈原作者〉大友 カヲル



僅かに男の肩が揺れた気がした。


映像が終わり、映写室に明るさが戻る。


静かな空間に男の声が響く。


「ありがとう…」


その言葉に、新庄監督とエリナさんが席を立つ。


私もその後に着いて部屋を出た。


佐久間も――ジュンさんも立ちあがる気配は無かった。