私と彼と――恋愛小説。

今のジュンさんからは想像も出来ない事ばかりだ。佐久間といいジュンさんといい別の世界に居るみたいだ。


「ありがとう…佐伯さん」


「いや、別に大した事じゃない。まあ、何か秘密もありそうだが…ともかく頑張れよ」


誰もが何かを感じている。けれど目の前の事を進めるのが先決だった。私の仕事はnoxで、佐久間やジュンさんの事を探る事じゃない。


一通り佐久間の条件はクリアした。後は映画のキャストに会う事ぐらいだった。


気が付けば、創刊迄ひと月。サイトの小説はエンディングへと向かっていた。


サイトを開き始めから読み返してみる。


バタバタと仕事に追われ、女の転換期を迎える主人公のエリ。同時に現れた恋愛対象の二人。


若く才能に溢れる陶芸家蒼と、仕事に情熱を燃やし成り上がった榊。


主人公の目線で書かれているけれど、男達の苦悩もエリの苦悩もイラつく程に伝わる。


何方かを選べば終わる…そんな単純な事では無い。おそらくどんな選択をしても、後悔は残るだろう。


女達はそのジレンマを自分と重ねながら、物語に没入しているのだろう。