走りながら、ふらつく頭で考える。

 僕は今、普通に生きていたら何歳なんだっけ?


 亡くなったときは6歳。それから…8年がたつから、14歳?


 学校、通ってみたかったな…。


 あの頃は、兄ちゃんは小2。
 帰ってくるなり、学校がめんどくさいめんどくさいと言っていた兄ちゃんが、僕はなんだかうらやましかった。



 兄ちゃん、今何してんのかな。


 そこまで考え、ふと僕の頭の中にはある仮説が立った。


「もしかして…まだタイムスペースの中?」


 もしかして、もしかして、兄ちゃんとカナメちゃんは、まだあそこに閉じ込められているのではないだろうか。


 代わりに僕が出てきたの? だったらこの肉体は?


「この体…僕のじゃない!」


 立ち止まり、再び自分の体をなめるように見回した。


 知らない誰かの体に、僕の魂が入ったのか。


 だとしたら、この体は、僕の魂が入る前からすでに魂は入っていなかったということになる。
 一つの体に二つの魂は宿らない。


 つまり、死んでいたということ。


「…!」


 え、それってつまり、大変なことなのでは…?



 もしかしたら、亡くなったこの体の持ち主の子は、あのときの僕のように、海に流され、行方不明になって、この沖に流れ付いた…?


 すでに亡骸だったその肉体に、僕の魂が入った…。



「えっ!? なにその法則…わけわかんない…!」


 僕はその場にしゃがみ、頭を横に振った。


 このまま街に出たら、大変なことになる…はず。



 どしたらいいの? まさか他人の体に入るなんて思ってもいなかった。


 兄ちゃんやカナメちゃんもどこなのかわからない。無事だといいけど…。



 そのとき、ポツリと、頬に冷たいものが当たった。


 空を見上げると、やっぱり。大粒の雨が地面を濡らし始めた。


 これから起こる、不吉なことを予言するかのように。