キラリと光る、破片?


 カナメの家の前は小さな階段がある。その階段と、その前の道から少し横にそれた茂みの間。

 何? ガラス? 僕はカナメの家の窓を眺める。が、特にガラスが割れた痕跡はない。

 じゃあ、ここにビンでも置いてあったのだろうか。といっても破片は人の手のひらほどのサイズのこれしかなさそうだ。


 危ないからどけておこうか。さらに茂みの奥にやろうと、その破片に手をのばした。



 この行為が、僕を後悔に追いやるのか、希望に追いやるのかは知らない。


 悲鳴に似たような声を出した。
 破片に触れた、という感覚がなかった。


 ただ吸い込まれた。破片が僕を吸い込んだ。


 突飛すぎる。この先に繋がる世界はもうわかっている。


 この破片がなんなのかも、もうわかっている。




‡‡‡‡‡





 ほら。



 ほら…?




 あれ、何、ここ。



 灰色じゃない。



 緑色だ。




 もしかして…タイムスペースが破損したから…こんなことに?




 亀裂の入ったタイムスペースから見えていた色は緑。ここと同じ。




、僕はその、名もない空間に浮いていた。




 眩しいほどのエメラルド。本当に夢の中みたいだ。




 果たして僕は今、体もいっしょにここにいるのだろうか。




 もしそうでないなら、僕はカナメの家の前で倒れていることになる。




 といっても、カバンもいっしょにある。おそらく体ごと来たのだろう。
 あとからめんどくさいのはヤだし、こっちのほうが都合がいい。




 それにしても、ここは何。




 タイムスペースがなくなったのかはわからない。ただ、本当になくなったのなら、ここは宙ぶらりんの世界。あの魂たちはどうなった?




 底知れない不安。自分がそれを壊した張本人であること。




 誰か来て。心細い…。




 奈落の果てのような不安に、一人、膝を抱えこんだ。