「何これ…穴? ひび?」
自分でつぶやきながら、嫌な予感がさらに増した。
灰色の空間。しかしカナメが指差したところだけは、灰色の空間が消え、緑色が顔をのぞかせている。
橋の上に空いた穴から、下にある川の流れをのぞくようだ。
大きさは指一本分ほどの細さ。
僕は慎重に、その緑色に手をのばした。
手が入る。指四本を横にしてなんとか入るほど。
特になんということはない。 しかし、これがハルカの言っていた「ひび」だということに気づくのは容易だった。
刹那、
「 ………うわっ!!」
突風が吹き荒れた。
手を入れていたひびが、みるみるうちに広がっていく。
あまたの光が飛ばされていく。僕はカナメが飛ばないように、背中を支える。
「あっ…昴!」
プツンと、昴が残像のように消え去った。テレビの画面を消すように、一瞬のうちに影も形もなくなった。
死んではいないと思うが、さらなる不安と心細さが僕とカナメを押し潰す。
「なんなの、これ……!」
苦し紛れにカナメがつぶやいた。突風は止まない。いつまで続く。早く。止まれ。お願い。
などと願っていたとき、突然ガラスが砕けたような音がした。
――ガッシャアァァン!!
耳をつんざく。化け物の悲鳴のようだ。
それと同時に、三角に割れた破片が落ちてくる。とっさに上を見上げた。
タイムスペース。灰色の時空を裂いて、亀裂が入った。パラパラと、ガラスの破片のように僕とカナメの周りに降り注ぐ。
亀裂の向こう側に、さっきのような緑色の空間が見えた。と思ったが、もう上を見ていられない。危ない。刺さる。誰か。
僕はカナメといっしょにうずくまる。カナメに覆い被さり、事が終わるのを待った。
しかし、
…終わるのだろうか。これは。
僕のせいか。僕があそこに手を入れたから…。
後悔先に立たず。何もできない。はがゆい。もどかしい。
――――――
―――
―
‡‡‡‡‡
自分でつぶやきながら、嫌な予感がさらに増した。
灰色の空間。しかしカナメが指差したところだけは、灰色の空間が消え、緑色が顔をのぞかせている。
橋の上に空いた穴から、下にある川の流れをのぞくようだ。
大きさは指一本分ほどの細さ。
僕は慎重に、その緑色に手をのばした。
手が入る。指四本を横にしてなんとか入るほど。
特になんということはない。 しかし、これがハルカの言っていた「ひび」だということに気づくのは容易だった。
刹那、
「 ………うわっ!!」
突風が吹き荒れた。
手を入れていたひびが、みるみるうちに広がっていく。
あまたの光が飛ばされていく。僕はカナメが飛ばないように、背中を支える。
「あっ…昴!」
プツンと、昴が残像のように消え去った。テレビの画面を消すように、一瞬のうちに影も形もなくなった。
死んではいないと思うが、さらなる不安と心細さが僕とカナメを押し潰す。
「なんなの、これ……!」
苦し紛れにカナメがつぶやいた。突風は止まない。いつまで続く。早く。止まれ。お願い。
などと願っていたとき、突然ガラスが砕けたような音がした。
――ガッシャアァァン!!
耳をつんざく。化け物の悲鳴のようだ。
それと同時に、三角に割れた破片が落ちてくる。とっさに上を見上げた。
タイムスペース。灰色の時空を裂いて、亀裂が入った。パラパラと、ガラスの破片のように僕とカナメの周りに降り注ぐ。
亀裂の向こう側に、さっきのような緑色の空間が見えた。と思ったが、もう上を見ていられない。危ない。刺さる。誰か。
僕はカナメといっしょにうずくまる。カナメに覆い被さり、事が終わるのを待った。
しかし、
…終わるのだろうか。これは。
僕のせいか。僕があそこに手を入れたから…。
後悔先に立たず。何もできない。はがゆい。もどかしい。
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