タイムスペース

 昴が亡くなったとき、僕は小2。

 その頃からハルカはタイムスペースを知っていたのか?


 さらに深まる謎を思案していたとき、向こうに漠然とした影が見えた。


「ハルカ?」


 声をかける。しかし返事はない。

 濃霧の中にいるようだ。この世界は何でできているんだろう。


「え…? あ…!? 七瀬さん…!?」

 か細い女の子の声が聞こえた。

 その声の主を見て、僕は彼女を凝視した。
 それと同時に「やっぱり」と心が納得していた。


「あ……かな、さん…?」


 名前がうろ覚えなせいで語尾が小さくなった。でも、間違いない。


「え……え、なんで七瀬さん…? ここどこなんですか!? 私ここで霜月さんに会ったんです…」


 電車の中で僕にキーホルダーを渡してきた子。やはりタイムスペースに来ていたのだ。


「たぶん…僕もここでハルカ…霜月さんに会ったんです。事情はあとで、話します…」

 僕は彼女を怖がらせないように、言葉を選んで話した。
 初めてここに来たときの僕と同じ状態だ。そりゃそうだろう。


「え、あの、七瀬さんですよね…? あの、全然関係ないこと言うんですけど…」

 彼女が心持ち大きな声を出す。

「私、友達にかなって呼ばれてましたけど、ほんとはかなめって名前です。愛崎カナメ」

!

「…わかった。じゃあ、愛崎さんで」


 そう言いかけ、僕は首を傾げた。

 この際だし、

「あ、やっぱりカナメって呼んでもいいですか? 僕のこともカナタって下の名前でいいです」


「え…あ、じゃあ、よろしくお願いします、カナタさん…」


「よろしく」


、ショートカットのよく似合う顔立ちに、特徴のあるピン止め。


 愛崎カナメ、加入。