タイムスペース

「あの私、昨日の夜霜月さんに会ったんです…!」


 電車に乗ってくるなり、その子は言った。


 ハルカに拾われ、本人は命を落としたキーホルダー。そのキーホルダーを昨日僕に譲った例の彼女だった。


「信じられないんです…! 私への怨念とか…!?」


 …もしかして彼女もタイムスペースに?


「霜月さんに…? ってどういうことですか?」


 僕は興奮をおさえながら尋ねる。
 こんな事実、あっていいのだろうか。


「あの、夢? で見たのかな…夢で霜月さんと会ったんです…。私、なんか変なところにいて…あんま覚えてないですけど…」



 夢…僕と同じだ。
 変なところ、というのはタイムスペースで間違いないだろう。

 頭の中で整理しながら、あの夢での出来事はすべて「ある事実」なんだということに確信を持った。



 むし暑い電車の中の空気がかさんだ雲のような感覚を味わわせる。
 まるでくもったメガネをかけているみたいだ。



「ただの夢だったのかな…ならいいけど…」


「霜月さん、何か言ってましたか?」


「えっ…いや、話してはないです。見ただけなので…」


 そうなのか。見ていただけなのか。

 そういえば昴のことは見たのだろうか。
 しかしここで聞くのはためらわれる。


 今日こそは見れたらいいな、と僕は心に強く願った。