目が覚めた。

 向かいの窓から見える外は西日に照らされ、あたりにオレンジが充満している。

 なぜ夕日はわざわざ赤くなって沈んでいくのだろう。

 いつのまにか電車の中は僕だけになっていた。
 やば、と一瞬あわてたが、自分は終点だったことを思い出し、胸をなで下ろす。

 ちょうど車内に女性の声のアナウンスが流れ、僕が降りる終点の駅の名前を告げた。

 乗客も僕しかいないということは、終点の駅で降りるのは僕だけなのだろう。
 高校の近くは車も人も多い都会なのに、電車も終点まで来るとすっかり緑の景色が増える。

 田舎者の僕はこの都会に慣れることができるのだろうかと不安になる。だからなのか、終点の駅が見えてきただけでなぜだか懐かしい気持ちになった。

 定期を通し、電車を降りる。

 今日の入学式、高校に来るときは親の車で送ってもらったから、これが記念すべきでもない初めての定期体験となった。

 駅から家もまあまあの距離があるが、普段駅など行かなかったこともあるので、周りの見慣れない景色で暇をつぶせる。

 西にかたむく夕陽を見つめながら、思う。


 また一日が終わった。


 しかし、これから始まる長い長い夜を越えれば、再び次の一日がやってくる。

 幾度も繰り返される当たり前の日々。それでもあきたことはない。

 この世界は終わりが始まりに繋がっているのだと、僕は思う。本当の「終わり」なんてないんだと思う。

 きっと、人生にだって。


 新品の制服が、さっき電車の中で寝たせいで変な体勢にでもなったのか、端のほうにすでに折り目がくっきりと付いてしまっていることに苦笑しながら、僕は肩にかけているカバンをよいしょ、と背負い直した。