「昴!」
僕は昴のもとへと駆け寄った。
信じられなくて。でも信じたくて。夢なら覚めないでくれと、この世界にすがった。
なぜ死んだ弟が生きているのか。
そんなこと、考えもしなかった。
会えた嬉しさだけが、僕を動かしていた。
そして、その「弟」は、不思議なすがたをしていた。
半透明の体。エメラルドのように透き通った緑色。
年齢は亡くなったときと変わらない、6歳のときのすがた。
ただ、足はない。まるでCGの世界のよう。ふわふわと浮遊していたのだった。
「! 兄ちゃん!」と呼ぶその声も調子も、変わらない。何もかも。
嬉しくて、幸せで、切なくて、泣いた。
涙というのは、なぜこうも空気を読まずに出てくるものなのか。
「兄ちゃん兄ちゃん! 会いたかったー! 大好きだったー!」
昴も泣いていた。
なぜ昴がこんなすがたになったのか、そんなことを聞く前に、とにかく今はこの感情にずっと浸っていたい。
終わってほしくなった。
「昴!」
僕は昴を抱きしめようとした。大好きな、弟に。
だけど。
「え……!?」
触れられなかった。
すり抜けたのだった。
僕が驚くと同時に、昴が悲しそうに顔を歪ませた。
「…ごめんね、兄ちゃん。せっかく会えたのに…」
最愛の弟に触れられない悲しみが脳裏を満たす。
「…幽霊?」
ぽつりと、僕はつぶやいた。
昴は「幽霊」を知らないようで首をかしげていた。でも、今の状況を説明するとしたらそうなる。
死んだ人間が生きているハズがないのだから。
「………」
幽霊。非現実的なものだ。
あれだけ非科学的なものを信じていなかった僕が幽霊に会うなんて。しかも弟の霊に。
なんてことを考えていたとき。
「…昴くん! 七瀬くん!」
背後から声がかかった。
振り向いて、僕は再び、驚いた。
ニット帽に、腰までの淡い色をした長い髪。
霜月さん、だった。
僕は昴のもとへと駆け寄った。
信じられなくて。でも信じたくて。夢なら覚めないでくれと、この世界にすがった。
なぜ死んだ弟が生きているのか。
そんなこと、考えもしなかった。
会えた嬉しさだけが、僕を動かしていた。
そして、その「弟」は、不思議なすがたをしていた。
半透明の体。エメラルドのように透き通った緑色。
年齢は亡くなったときと変わらない、6歳のときのすがた。
ただ、足はない。まるでCGの世界のよう。ふわふわと浮遊していたのだった。
「! 兄ちゃん!」と呼ぶその声も調子も、変わらない。何もかも。
嬉しくて、幸せで、切なくて、泣いた。
涙というのは、なぜこうも空気を読まずに出てくるものなのか。
「兄ちゃん兄ちゃん! 会いたかったー! 大好きだったー!」
昴も泣いていた。
なぜ昴がこんなすがたになったのか、そんなことを聞く前に、とにかく今はこの感情にずっと浸っていたい。
終わってほしくなった。
「昴!」
僕は昴を抱きしめようとした。大好きな、弟に。
だけど。
「え……!?」
触れられなかった。
すり抜けたのだった。
僕が驚くと同時に、昴が悲しそうに顔を歪ませた。
「…ごめんね、兄ちゃん。せっかく会えたのに…」
最愛の弟に触れられない悲しみが脳裏を満たす。
「…幽霊?」
ぽつりと、僕はつぶやいた。
昴は「幽霊」を知らないようで首をかしげていた。でも、今の状況を説明するとしたらそうなる。
死んだ人間が生きているハズがないのだから。
「………」
幽霊。非現実的なものだ。
あれだけ非科学的なものを信じていなかった僕が幽霊に会うなんて。しかも弟の霊に。
なんてことを考えていたとき。
「…昴くん! 七瀬くん!」
背後から声がかかった。
振り向いて、僕は再び、驚いた。
ニット帽に、腰までの淡い色をした長い髪。
霜月さん、だった。
