ガタンゴトン、と電車がゆれていた。

 春の日差しに照らされたほこりがちらほらとあたりの空間を舞う。

 午後のぽかぽか陽気。春といえど、昼は過ごしやすい暖かさになる。
 あくびを一つしながらケータイを開いて見ると、3時30分。昼ということもあり、電車の中はがらんとすいていた。立っている人もいない。

 入学式の帰り。

 特に誰と話すというわけでもなく、坦々と時間は過ぎた。
 広い校舎に驚いたり、長い説明にあくびをもらしたり、生徒の多さにこれまた驚いたりとしているうちに、気づけばもう終了していた。

 まあ入学式など、みんなこんなもんであろう。

 ちなみに両親は車で来ていたので電車にはいない。同じ学校の生徒も見当たらない。この電車でこの高校に通うのは僕だけなんだろう。

 特に寂しいと思うわけでもなく、あるがままに電車にゆられる。

 むしろ一人のほうが過ごしやすいのでかえって好都合だ。

 こんな性格だから僕には友達というものができないのだろう。人との会話が苦手なわけではないが、他人といるより一人でいるほうが落ち着くのだ。

 でもしかたがない。こんな性格に生まれてきてしまったのだから。
 かわりに友達がいなくてもかれこれ15年間生きてきたのだから。

 友達を娯楽と言っていたのは誰だったっけ。
 生きていくのに、人生を楽しくしてくれるもの。しかし、絶対に必要なものというわけではない、と。

 僕みたいに一人が好きな人は無理に友達を作ろうとする必要はないのだ。一人のほうが楽しいなら、友達を作ってもしかたがない。

 静かに波打つ電車にゆりかごのようにゆられながら、うとうととうたた寝をしていた。