タイムスペース


「…なんで」




 なんで、行っちゃったんだよ。



 声にならない感情が渦巻いていた。

 何も考えられない。考えたくない。



 あの時。線路の上で迫り来る電車を見つめていた君を。



 なぜ。


 なぜ、そんなことをした。



 何か悩んでいたのか? 僕の知らないところで。


 だから自殺したのか?



 …許せないよ。


 僕は何をしたらいいのかな。




 学校中は大騒ぎ。

 霜月さんの突然すぎる事故死を知り、涙を流す者、顔を歪ませる者、しゃくり上げる者。


 僕はただ、何も言わずに拳を握っている者。




 僕とあの子が同じ電車ではなかったら。

 疎遠だったら。

 ただの、「一人の男子高校生」と「一人の女子高校生」だったら、僕はそうなってはなかっただろう。


 きっと、「遠くから悲しむ者を見つめる第三者」だっただろう。


「……」


 カバンからちゃりん、と軽い音がした。



 100円玉が二枚。



 あのときもらったキーホルダーのお金。


 なぜ彼女がわざわざキーホルダーの値段に対してサバを読んでいたのかも、聞きたかった。


 改めて、ありがとうって言いたかった。



 それなのに。


 事故だなんて。



 心に穴が空いた。
 絶対に埋まらない、深い穴。


 だけど、その穴は前から空いていた。

 大切な人を失う悲しみ。



 最愛の弟をなくした悲しみが蘇ってきた。


 もう、大切な人をなくしたくなかったのに。


 こんな悲しいこと、もう思い出したくなかったのに。



 僕にとってあの子は、大切な存在 だったのだ。



 3週間にも満たない出会い。


 それでも、楽しかった。



 ずっといっしょにいたかった。




 僕は、君が好きだった。



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