終わりは、嫌いだ。

 平凡な時間を垂れ流す日々。何をしようが時間は流れる。でも、そんな素朴なことにも終わりは告がれる。
 ほんのささいなことにも。たとえば今こうやって聴いている音楽も、数分前に始まったばかりなのに、すでに旋律はとぎれ、低く余韻を残していた。

 ああ、終わった。

 そしてまた繰り返される。リピートに設定しているから、終わらない。
 終わったのに、終わらない。



 3月は、嫌いだ。

 別れの季節。桜の花びらが散る中で学生服を着た生徒たちの手がゆれる。笑い声と泣き声。

 少し前にそんなことがあったハズなのに、何ヵ月も前のことに思える。

 中学時代はろくに友達と呼べるヤツなんていたっけ。出会った人々はすべて「知人」だったような気もする。
 単に自分が知人以上の領域に入るなとバリアをはっていただけかもしれない。
 



 でも、別れのあとには出会いがある、と僕は信じている。



 4月。


 新しい場所。新しい制服。新しいカバン。
 出会いの季節。

 高校生になる僕も少なからず、胸の踊る季節。



――今年の春は、新しい出会いに期待してもいいですか。




 遥か彼方のいずこにある運命に、僕はそう問いかけた。