【美優side】




『ごめん…もう、笹原のそばにはいてやれねぇ────。』



掴んだ手をそっと離される。



いや、嫌だ……


行かないで……!





「イヤぁ───!!」




ガタッと椅子が傾き、あたしは床に倒れこんだ。



「美優!?美優…っ、しっかりして!!」



愛美の声がして、フッと我に返る。



……ここ、教室だ。



周囲を見渡すと、文化祭に向けて準備しているところだった。



「美優、お昼休みからずっと寝てたでしょ?大丈夫…?」



随分寝てしまっていたらしい…


あんな嫌な夢みるなんて……




「無理しないでよ…辛いんだったら、劇も出なくていいんだよ?」



愛美はあたしの手を取って切なげに微笑む。


クラスのみんなは、あたしと橘の関係が終わったことを知っている。


学校に全く来なくなってしまった橘は王子様の役を外されて、代わりに宮村が王子役をすることになったのだ。