静かな高台とは違いたくさんの人が溢れる南橋。

花火の時間が迫ると大勢の人が河原に移動して行く。


あたしはその人々に逆らって南橋宮に走った。



たくさんの屋台が並ぶ通りを探しても橘は見当たらない。


橘も屋代さんとどこかに移動したのかな…


橘に連絡しようとするも携帯の充電が既に切れていた。



橘…どこにいるの?


会いたい、会いたいよ────




もう屋台の通りを何往復していたとき、肩にポンっと叩かれた。



「橘っ!?」



振り返ると……


橘じゃない、見知らぬ若い男が数人あたしを取り囲むようにして立っていた。



慌てて避けようとするも、男は道を阻むようにしてあたしの前から離れない。



「ねぇ、キミ一人?」



男の一人があたしに顔を近づけるようにして言う。



「ち、違います。人を探してて…」