もう、帰ろう。
夏休みの間、橘に会わなければ思い出すことはきっとなくなる。
カバンを持って急いで教室を出ようとしたとき、後ろから声がかかった。
「あっ、笹原!お前も海一緒に来ねぇ?もちろん泊りで!」
そんな声がして振り返ると、橘たちのグループにいた足立くんがあたしにそう言ったんだ。
「は……何言って」
どうしてあたしもあんたらの茶番な旅行に付き合わなきゃいけないの。
どう考えてもおかしい。
「え、でも〜美優ちゃん年下彼氏いなかった〜?」
その話題にふと橘と目が合い動揺した。
「あ、あれは違うからっ、勝手に足立くんが…っ」
「あれ?彼氏じゃなかったんだ!じゃあいいじゃん!海の近くに悠月のおじいちゃんがペンションやってるらしいしさ!一緒にどう?」
一緒にどう?ってお茶に行くんじゃないんだからさ…
まだあたしをオトす賭けやってるわけ?
本当、懲りないやつら。