「いいじゃ〜ん、あたし悠月と同じ部屋がいい〜!」
「やだ〜!あたしも〜」
ああ、もう限界。
さっさと帰ろう。
手早くカバンに荷物を詰め込んでいるとまたしても後ろからきゃっきゃと女子たちの声がする。
気になって横目で盗み見るようにしてみると橘は楽しそうに一人の女子の肩に腕をまわしていた。
「紗季は絶対パス。だってお前、イビキすげぇじゃん」
「何々〜?紗季と悠月ってそういう仲なんだ〜」
あたしはカバンをギュッと握りしめた。
お前……
『お前のデカイ頭が邪魔で黒板見えねぇんだけど』
『……心配かけんなよ。お前が元気ねぇと俺まで元気なくなんの』
いつも気がつけば近くにいて、言い合いばかりの喧嘩して
お前、お前って…あたしだけに言っているんだと思ってた。
あたしは橘と仲の良い友達だって自信はあった。
でも、そんなことなかったね。
胸がキューっと痛んで苦しい。