【悠月side】



ああ、やっちまった。


そう、後悔したときには遅かった。


泣いているアイツを見て俺は何をしてるんだと、そこで初めて気づいた。


強引に迫り感情任せのキスをして。


「好きな女泣かすなんてガキかよ俺は」



資料室から出て教室に戻ろうとすると、廊下の壁にもたれて立っている一人の男がいた。



「へぇ…賭け、だったんだ?」



そう言ってどこか不適に笑うのは和樹だ。


「……テメェ、聞いてたのかよ」



「隣の部屋に用があっただけ。盗み聞きなんてしてねぇよ?」



なんて、笑う和樹に呆れる。

バリバリ盗み聞きしてたんじゃねぇかよ。


俺は一刻も早く資料室の前から逃げたくて和樹の腕を掴んで足早に歩いた。