鏡の前に立ちあたしは唖然とした。

寝起きの顔は最悪だった。


やっぱり泣き腫らしたのが原因か…



「ブッ、お前蜂にでも刺されたのかよ」


呑気な声が聞こえて隣を見るとあたしの兄がいた。



「うるさいっ!元はと言えばお兄が…」



歯ブラシを大きく振り上げるとお兄は少し悪びれたように笑ってあたしの肩を叩いた。


「まあまあ、そんな怒るなって!お前追っかけてきたヤツらも捕まったみてぇだし!よかったな!」


何がよかったな!だよ。


アンタのせいでしょっ!


笹原涼斗を狙ってあたしを追いかけ回した黒いワゴン車のアイツらは昔お兄のせいで少年院に入れられていたらしい。

悪いのはアイツらなのだけどそれを逆手に恨みを持ちお兄に復讐しようとしていた。


本当、災難だよ。


「でも、よかったな。橘くん…だっけ?助けてもらったんだろ。ちゃんと礼言っとけよ?」


あたしの頭をぽんっと軽く叩いてお兄は洗面所を出ていった。