「離すと逃げんだろ?…そうなること分かっててわざわざ離すかよ」
不意にこちらを向いた橘はフッと余裕そうに笑った。
「……べ、別に逃げたりしないし」
別に逃げたり…
すると、橘はあたしの顔をジッと見つめてきた。
あたしもどこを見ていいのかわからず背の高い橘のその端正な顔を見上げる。
まるで時間が止まったようで傘に雨が当たる音が聞こえない。
あれ……あたし何ドキドキしてるんだろ
「じゃあ…逃げんなよ」
低い声で囁くように言った橘はあたしの顎を掴んで引き寄せ…
「わぁ!見て〜!おにいちゃんとおねぇちゃんチューしようとしてるよ〜!」
その声にハッとして周りを見ると幼稚園生だろうか小さい子達があたしたちを指差して笑っていた。

