最近、ジメジメとむさ苦しい夜が続いている。
もうすぐ夏がやってくるんだね。
まだ陽が昇って間もない頃
あたしは家を出た。
朝の住宅街は静かでなんか好き。
ん〜と伸びをして家の鍵をかけていると近くから声がした。
「あ、美優センパイ!」
その声の方に身体を向けると
隣の柔道場からあたしと同じように出てくる1つ下の後輩、陸がいた。
ニコっと笑った陸はほんと弟みたいで可愛い。
まあ、たまに生意気なんだけど…
「おはよ、朝から練習してたの?」
「これ、忘れてたんで取りにきたんです」
ひょいっと柔道着を片手で持ち上げる陸。
「また〜?換えのはあるんでしょ?洗っといてあげる。明日練習のとき取りにきて」
「さすが美優センパイ!女子力高いっすね」
「……え?」
女子力……
何だかあたしには聞き慣れない言葉で少しむず痒い。