「助からない…?」

「…」

「そんな…」


真由子さんは何も言わなかったけど、真由子さんの表情で、この男の子が助からないことはわかった。





「でも…」

「え?」

「最後まで諦めない」





かけていたサングラスを取り、真由子さんは救助隊の人達に近づいた。






「私は医師です。力になります」

「え、医者?…助かりました!交通がふさがってしまったみたいで、救急車が遅れてるんです」


心臓マッサージをしていたレスキュー隊と、真由子さんが代わる。





「頑張れっ!頑張れー!!」


真由子さんは、叫びながら心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す。


その表情は、いつもの真由子さんではなく…

医師の顔だった。



私は野次馬に交ざりながら、そっと見守ることしかでしない…




この男の子は助からないと…

ここにいる、誰もが思っている…


でも私は…

真由子さんと同じ。



最後まで諦めない。






頑張って…






トン…




後ろから、空翔さんに肩をそっと叩かれる。

隣には、楓雅さんとバネちゃんもいる。






「…真由子はなんて?」

「……助からないと思うけど、最後まで諦めないって…」

「そっか…」


空翔さんは、そう言って男の子を見つめた。






「あれは…ただ本人や親の不注意で溺れたわけじゃない。モンスターの仕業だ」

「えっ…」