「ねえ、お願い空翔…一回だけでいい…」

「…」


空翔は何も言ってくれない。こっちを振り向いてもくれない…




「お願い…ねえ空翔…お願い!」

「…」

「いっ、回だけで…いいのっ…お願いっ…」


泣かないと決めていたのに、目から涙がこぼれてしまった…

空翔の前で泣きたくなかった。泣いちゃいいけなかった…だって一番泣きたいのは、空翔だから…





「空翔っ…お願い!」


私は泣きながら空翔の背中に抱きつく…

大量に流れ出る涙は、空翔の傷ついた翼にポタっとたれた。




私のせいで…空翔にこんな想いさせたくない…

こんな未来のために、私たちは出会ったの…?

せっかく紙神を倒したのに…こんな未来悲し過ぎる…






「う…っ………ひ………」


次々に流れてくる涙を拭くのも忘れ、ふと薄目を開けた時…ものすごい光が、私の目をくらました。




「えっ、なに!?」

「え…」


驚いていると、空翔はとっさに後ろを振り向くと、光に気づいて目を凝らしていた。



光はどんどん強くなり、オレンジのような色から白に変わって行く…

そして肉眼で直視出来ない程にまでの光の強さになり、私と空翔は目を閉じた。しばらくして光が収まったのを確認すると、私はそっと目を開けた。





「…ん」


ゆっくりと目を開けると、もう光はどこにもなく…部屋は特に変わりはない。でも…





「つ、空翔…」

「え?」

「翼が…!」


空翔の傷ついていた黒い翼が、元に戻っている…

折れた方の翼は、折れてなくなっていた部分が新しく生まれていて、傷ついてボロボロだった方の翼は…綺麗に治り元通りになっていた。





「どういう…こと?これって…」

「お前の…能力か…?」

「え?」


私の…能力って…




「私は特殊な血を持っているだけだよ?」

「いや…血だけじゃなかったってことだろう。お前の体の全てが、特別な力を持っているんだ…肉体も、体内も…そこから出る涙さえも…」


私自身が…特殊な能力を持っているってことなの…?

ううん…今はそれは置いておいて…