一途な彼は俺様モンスター

空翔の言う未来は…私との未来のこと。つまり空翔は、今から私に告白しようとしてるんだ…

自惚れるわけじゃないけど、空翔の気持ちは言わなくてもわかってる。きっと…私の気持ちだって空翔はわかってるはず。でもあえて言葉に出して言おうとしてくれてるのは、全部私のため…

私の為に、空翔は今から告白をしようとしている…怪我を負って、翼を無くし…ヴァンパイアとしての未来を諦めようとしているのに…



空翔のことが好き。大好き…でも・・・


これで幸せになれる…?

空翔はそれでいいの…?



私にできることは…本当に何もないの…?





その時、医療機器が置いてあるトレーのような棚の上に、何本かメスが置いてあるのが見えた…

後ろで何か話している空翔の言葉は、私の耳に届くことはなく、私は何も考えずにその棚に近づいてメスを手に取った。




「…浅海・・・?」


私の行動を見て、空翔は一瞬で私のやろうとしていることを察したのか、勢い良くベッドから離れ私に近づいて来た。

私はメスを空翔から遠ざけようとしたが、空翔は私の手を力強く掴みメスを無理矢理取り上げる。そしてそのメスを、部屋の隅に投げた。





カランっ…カラ…



メスは遠くに飛んでいき、何処にいったのかわからない。

私はまた棚に手を伸ばし、他のメスを手に取ろうとした。




「やめろ!」



ガンっ

カラカラ…



空翔は大声を出して、その棚を足で蹴飛ばし床に倒した。メスや他の器具は床にバラバラに落ち、私はしゃがみ込んでメスか代わりになるものを探す。





「やめろ浅海っ!」

「離して!私に出来るのはこれしかない!」


そう。私に出来ること…

それは、私の血を空翔に捧げることだ。




「そんなことしてもらいたくなんかない!」


空翔は私の両手を握り、壁に追い込むと暴れる私を、押さえつけるように力を入れた。





「どうしてよ!?私の血を飲めば、ケガはすぐ治るし…それに翼だって…元通りになるのよ…?私の血はケガを治すだけじゃない…一度失ったものを、また再生する力を持ってるのは知ってるでしょ…?」


それしか空翔を救う方法はない。私はやっぱり…ヴァンパイアとしての空翔に、一生を生きてもらいたいの。





「…んなこと・・出来ねえよ」

「どうして…」

「…あいつが・・紙神と同じことをしてお前を利用するなんて…俺には出来ない…」


悲しそうな空翔。でも私は続けた。




「紙神と同じなんかじゃないよ!」

「いや同じだ。俺はお前の体に傷をつけてまで、お前の血を欲しいなんて思わない。そんなことするんだったら、人間として生きた方がマシだ」

「…!」


空翔の目は力強く、決して強がりではなかった。でもその目の奥には、ヴァンパイアとして生きたいという気持ちがあることを、私はわかっていた。