一途な彼は俺様モンスター

「散々浅海を費用しておいしい思いしてた野郎が、後悔なんて口にしてんじゃねえよ…」

「ぐはっ…」


紙神は口から血を吐いたあと、クククと笑った。





「強いモンスターになりたかった…お前みたいな…強いモンスターに…」

「…」


紙神の顔に嘘はなかった。だけど…浅海のことを考えると、同情は出来ない。






「空翔ーーーー!」


後ろから楓雅の声がする。振り返ると、見覚えのある空飛ぶ乗り物に乗った、楓雅と真由子…そしてマサシがいた。

地上に降りると、楓雅とマサシは俺に、真由子は浅海に駆け寄った。





「だ、大丈夫かよ!?ったくお前はいつも心配ばっかりかけて!!」


楓雅はボロボロになった俺を見て、今にも泣きそうになっている。隣にいるマサシを見ると…





「久しぶりに会ったというのに…そんなにケガをしおって…お前も相変わらずだな」

「…うるせえよ」


ガキの頃、死にそうになった俺を助けてくれたマサシ。紺色の着物に、髪はボサボサの白髪まじりの爺さん。…見た目は出会った頃と全く変わっていない…

きっと、心配して楓雅がマサシを呼んでここまで来てくれたんだ…どこまで心配症なんだよ。






「紙神。お前の噂は聞いておる…」


マサシは紙神に近づくと、地面にあぐらをかいて座った。





「強さを求めた結果がこのざまか?1人の少女の人生を壊し、苦しめた結果が…」

「…どんなことをしても・・強くなりたかった…」


紙神の目からは、うっすら涙がこぼれた。





「わしは薬草のモンスターで、元々は強いモンスターなんかじゃない。名前も本当は『草樹之助(そうじゅのすけ)』という」


「え!?」

「マサシじゃないの!!?」


俺と楓雅は同時に声を出した。





「マサシは…まあミドルネームみたいなもんじゃ。薬草のモンスターなんて…かっこ悪いからな…自分でつけたんじゃ」

「なぜマサシ?」

「べつに草樹之助でもいいんじゃ…?」


俺と楓雅がコソコソと話すと、マサシは「うるさい!」と怒鳴った。




「生まれつき特別な力があったわけじゃない。ただ薬草の知識があっただけじゃ…そんな自分が大嫌いだった。だから強くなるために、波ならぬ修行をしたのじゃ」


マサシは懐かしむように言った。




「わしは何年もかけて自分に力をつけた。そして薬草の知識を生かして、医師になる道を選んだのじゃ…」

「マサシ…」


俺たちに武道や能力を教えてくれる程マサシは強いし、知識があった…それは生まれ持ったものだと思っていたけど、違ったのか。

今のマサシをつくったのは、生まれつきでも、誰の力を借りたわけでもじゃなく…マサシ自身の努力なんだ…





「紙神。お主も自分の力で力をつけたら…こんな結果にはならなかったかもしれん…」

「ああ…」


紙神はそう頷くと、もう何も言わなかった…