一途な彼は俺様モンスター

「グッハッっっっ……」


急所を深くついたのか、紙神の口と胸からは大量の血が流れる。




紙神にナイフで刺され、浅海とバネが登場してから、ずっと頭の中で紙神を倒す方法を考えていた。そして待っていたんだ…

紙神がまた俺を刺す時を…


俺を刺す時、紙神と俺との距離は縮まる。その隙を狙って、俺も紙神を攻撃すればいいだけのこと。

これだけダメージをくらっているから自信があったわけじゃなかったが、浅海とバネのおかげで少しだけでも体力を温存できた。




ブサ……………




紙神の胸から手を抜くと…血はより溢れ出て、紙神の着ている白い服が真っ赤に染まった。




「くっ………油断したか…でも大丈夫…だ…」


紙神は苦しそうに手を動かして、懐から血の入ったボトルを出した。



まだ浅海の血を持ってやがったか…あれを飲んでまた回復する気だな…

その前に止めを刺さないと、マジでやられる…でもさすがに体が動かねえ…




「浅海…バネ…逃げろ……」


お前らだけでも逃げてくれ。頼む…


俺がそう言っても、浅海とバネはその場を動こうとしなかった。その間に、紙神は浅海の血をガブガブと飲む。





「ふう…これで一安心…」


また余裕の笑みを浮かべる紙神。俺は死ぬ覚悟を決めた…その時…






「ぐはっ……はっ…くっ」


急に紙神が苦しみ初め、膝を地面についてもがき始めた。



な、なんだ…?





「気分はどう?苦しい…?」


浅海?



浅海は立ち上がり、紙神に近づく。





「ぐっ………お前…何をした…?」

「あんたの持ってた私の血が入ったボトルに、ちょっとした細工をしただけよ」

「なに?」


細工…?



紙神は驚いている様子。おれも同じだ。





「それに気がつかなかったなんて…バネちゃんはさすが空翔の弟子なだけある…」

「バネ…?あのチビか?」


キョロキョロとバネを探す紙神だったが、バネは気がつくと俺のそばにいて胸の傷の血を止めようと必死になっていた。




「そうよ。バネちゃんはこっそりあんたの血の入ったボトルを持ち出して、私のことろに持ってきてくれたの…」

「なんだって?」


持ち出した…?


もしかして、さっきバネが紙神にしがみついていた時…?確にあのとき、バネの手元が動いていたけど…その時に紙神の懐からボトルを持ち出したのか?





「この辺にはね…私の一族が住んでいた頃から、咲いている花があるの。それは一見綺麗なんだけど…お父さんからは決して触っちゃダメと言われていた…なぜなら…その花には猛毒があるから」