一途な彼は俺様モンスター

「バネ!やめろっ!!!」


俺の声が届く距離なのに、バネは一切羽を止めることはなく、また紙神に飛びかかり今度は紙神の脇腹の辺りにしがみついた。

紙神は振り払おうとするが、バネはしっかりとしがみつき、よく見ると手をゴソゴソと動かしているように見える。




バネ…一体何やってんだ…?





「どけっ!チビ!!」

「うっ…」


紙神はバネの頭を鷲掴みして、遥か遠くにほおり投げた。




「バネっっ!!」


数メートル離れた先にバネは飛ばされ、地面に叩きつけられる音がした。土の砂がバネの落ちた周りを舞い、見なくてもバネがケガを負ったのがわかる。





「て、てめえ…」


俺は拳を握り締めて、紙神を睨んだ。紙神は余裕の笑みを浮かべ、それを見ているだけでぶん殴ってやりたくなる。




「いい顔になってきたな…それでこそヴァンパイアだ…」

「うるせえ。俺の前では回復を繰り返してこすいことして、バネみたいなガキには本気出すのかよ…本当汚ねえ野郎だな」


こんなの戦いなんかじゃない。本当のモンスターはこんな戦い方しねえよ。






「何とでも言え。痛くも痒くもない…」

「だろうな…お前には心がないことはわかってる」


モンスターといえど、みんな心はある。

善でれ悪であれ…みんな心を持っている…いや、それはモンスターだけじゃない。人間だってそうだ…


でもこいつは…心の欠片もない。

こいつさえいなければ、浅海があんなに傷つくことはなかった…



家族や一族を失うこともなかった…

紙神さえいなければ、もっと楽しい生活を送れたのに……


こいつさえ…現れなければ…








「そろそろ決着がつくな…」

「ああ…決着がつくんじゃなくて、決着をつける…」



もう終わりする…


こいつの全てを…









「死ね、紙神…」







ばきっ

ばきっばきっ…



バチバチバチバチ…






手に力を入れ妖力を高めると、手に黒い稲妻が走った…