今までは、いつも周りにいる大人が私を守ってくれていた…

特殊な血液を生まれつきに持っていただけで、過保護に育てられ、いつしか私はか弱い女の子になった。


でも今はもう、私を守ってくれる大人たちはいない。

友達も…仲間も…

空翔だって…いない。


自分で自分を守らなきゃ…ダメなの…






「捕まえた」

「さ、触らな…きゃ!」


ドスッ




紙神に後ろから手を掴まれ、それを振り払おうとすると、思いっきり転んでしまう。

私の体は茂みに埋まり、立ち上がろうとすると、紙神に上から思い切り押さえつけられた。





「離してっっ!」


ここから逃げないと、私は自分の人生を失ってしまう。

記憶をすり替えられて、好きでもない人と一生を過ごすことになる…

だから逃げないといけないのに…力を入れてもびくともしない。



なんで私はこんなに弱いの…?


こんなことなら、幼い頃からもっと鍛えておくべきだった…

誰かに捕まっても自力で逃げられるように、親に反対されても力をつけるべきだったんたんだ…


空翔たちみたいに…







「なぁ…なんで俺がお前にこんなに入れ込むと思う?」


私を上から押さえつけながら、私の耳元で小さな声で囁く紙神。





「そんなこと…知りたくもない!」

「フフ、いや…この際だから言っておこう…」

「?」


不思議に思いながら、上にいる紙神の様子を伺うように目を上に向けた。





「お前に惚れてるからだよ…」

「っ…!」


その言葉を聞いた瞬間、体中に寒気が走り、抵抗するのも口をきくことも出来なくなってしまった…

完全に力が抜けた状態になったそんな私を見て、紙神はそれを待っていたかのような口調で続けた。





「そりゃあ、人間の娘でも何年も一緒に暮らせば情が芽生えるもんだろ。弱いモンスターだけど、俺にだって一応心はあるからな」


嘘なのか真実なのかよくわからなかったが、紙神の言葉は真剣に聞こえた。