すると、家の中に煙が入ってくる。



「時間がない!行くぞ!!浅海!お前は絶対に助かる!信じて!わかったか?苦しいが耐えるんだ!一族の血を絶やさないでくれ…」


震えるように泣くお父さん。




「行くぞ…」

「はい…」

「行かないで!!お父さん!お母さん!」


お父さんは辛そうな表情をして私に背を向け、お母さんは口を押さえて泣き、私をぎゅっと抱きしめたあと、玄関に向かって歩き出した。





お父さん…


お母さん…







リビングの床に倒れて込んで泣く私。




どうして…!?

一人でここに残るくらいなら、お父さんたちと一緒に行かたかった…


私の血なんてどういでいい。






「な、何だお前は!?」

「きゃー」



ガタンっ







その時、玄関の方で何やら大きな音がして、驚いているお父さんとお母さんの叫び声が聞こえた。







「お父さん…?お母さん?」


恐る恐る、リビングのドアから玄関を覗くと…

お父さんとお母さんが、玄関で倒れている。

とっさにふたりに駆け寄ろうとすると…






「だ、誰!?」


玄関の横の階段に、見知らぬ男が座っているのに気がついた。

男は私を見るなりスッと立ち上がり、ゆっくりとこっち近づいてくる。





「こ、来ないで!」


怖くなりリビングに逃げ込む。


家の中はかなりの煙が入り込んでいて、視界は悪いし、さすがの私でも生き苦しい…




どうしよう…


逃げ道がないよ。







がシャンっっっ







「きゃ!」


1階の窓ガラスが火事の火で割れ、部屋に入ってくる。

その瞬間一瞬で周りが熱くなり、立っていられなくなった。






ギ…



後ろから足音が聞こえてくる。




さっきの男が追いかけて来たに違いないが、振り返っても煙のせいで男がどこにいるかわからない。






「ゴホッ」


特殊な血を持つ私でも、さすがに煙を吸うと苦しい…




ガタ…




床に倒れ込み、手で口を押えた。

苦しくて、あの男のことを考える余裕がなくなってきている。




苦しい…


助けて…




助けて・・・・・・空翔…












「浅海っっ」