がやがや




「夏休みはオーストラリアに行ってたの♪」

「私はスイス。スキーやりたくて」

「俺はドイツ」


教室に入ると、クラスメイトたちは夏休み前よりもそれぞれ垢抜けていて、

お決まりの自慢話を披露する会話が、嫌でも耳についた。



私は真っ直ぐ自分の席につき、かばんから荷物を出した。

久しぶりに学校に行くと、毎日やっていたこの行為すらなんだか新鮮なことのように思えた…






「今日はなにをするんデスカ?お勉強?」


私の肩からひょいと降りて、机の上に座りキョロキョロと周りを見るバネちゃん。





「今日は勉強はしないよ。始業式っていって、校長先生の話を聞いたりするの」

「ヘェ~」


バネちゃん、多分わかってないだろうな…(笑)

ま、これから毎日一緒に学校に来るんだし…段々わかってくるよね。





「皆さんおはようございます。夏休みはいかがでしたか?」




すると、さっきの担任の先生が教室に入ってくる。


いい忘れていましたが、担任の先生はとても乙女系のおじさまです。

きっとあっちの世界の方のような気もするけど、そのことを突っ込む生徒はいません。

とても優しくて、清潔感のある礼儀正しい人なので、生徒たちの人気者。


ちなみに名前は『広田先生』。






「ワタクシは夏休みを利用して、姉とイタリアに行きました。本場のパスタやピザを食べ過ぎて太りましたわ」


広田先生は「トホホ」と泣く真似をした。

生徒たちはクスクス笑う。




学校へ来るのは毎日苦痛だったけど、先生にいつも癒されていたおかげで、少しだけそれが紛れていたことを思い出した。



ふとバネちゃんを見ると、そんな先生の話を真剣な顔をして聞いている。


なんか生徒が1人増えたみたい…



私は隠れてクスッと笑った。






「あーそうだった。忘れるところだったわ~今日は転校生がいるんですよ」



ざわ…







転校生!?

珍しいな…