伊原木くんは幸せそうに微笑むと、うん、と鼻を啜った。
そしてもう一度、私たちは口づける。


この涙が、このキスが、この愛が、私を蝕む毒になる。
何度も何度もこうして毒を分け合って、気づいたときには身体の奥まで染みついて、どうしたってもう離れられない。


たとえばこの毒に犯されて、百年の眠りに落ちたとして、

何もかもを忘れ去って、抱き合ったまま目を覚まして、そしてもう一度、お互いを愛することができるなら。

そのとき私たちは初めて、本当の意味で幸せになれるんだろう。



「……ずっと一緒にいるよ、伊原木くん」



愛がなければ生きられない。
それは彼か、それとも私か。





(……ああ、なんて、かなしいいきもの)











あいをこう、けだもの

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