このままじゃいけない。わかってる。

でも、私も、きっと、伊原木くんも。
頭ではわかっていても、どうにもならないことが、ある。

罪悪感に押し潰されそうになっても。
いっそ手放してしまった方が楽になれると知っていても。

愛しているのに、愛しているから、

救いようもない。
これが、性(さが)なのだ。





「凛子ちゃん、」

「……んー」

「ぎゅってして寝ていい?」

「……いいよ」

ふたり揃って布団の中に落ち着くと、途端に眠気に襲われ瞼が重くなってきた。
とろんとした微睡みの中で、伊原木くんに横から抱き寄せられる。


「……おれ、凛子ちゃんとずっと一緒にいたいよ」

「……うん」

「……どうすれば、いいかな」

耳元で、掠れた声が泣きそうに、震える。

私がどんなに許しても、彼の中の本能(ケダモノ)は容赦なく彼の罪を上塗りする。その度に彼は自責と不安でぼろぼろになっていく。

私に愛想を尽かされるかもしれない。
私に捨てられてしまうかもしれない。


私が彼を見捨てれば、きっと彼は、もう生きていけない。


「……大丈夫、一緒にいるよ」


愛しい愛しい、私のかわいそうな人。

離れられるなら、もうずっとずっと前に離れていた。

私の分まであなたが泣くから、

私はもう涙が出ない。