「そ、そろそろ帰んないと!じゃーね!優。」


あたしは自分の気持ちを誤魔化すために、その場から立ち去ろうとした。


「待って。」


なのに、優に腕を掴まれた…。


「1つ、言わせて。…美彩、サッカー部のマネージャーになってくんね?」


「え…?」


1瞬、頭が真っ白になった。


「俺、サッカー部に入ってんだけど、マネージャー1人じゃ大変そうで。美彩に、マネージャーになって欲しい。」


優に見つめられる…。


「…いい…よ…。ちょうど帰宅部だったし。」


あたし、何でいいよなんて言ってんの…。
無意識で言ってしまった…。


「よっしゃ!美彩、マジありがと!!」


そんな笑顔、あたしに向けないでよ…。


「別に…。…じゃー明日ね!!」


「明日な♪」


あたしは走った。


走って、走って、



たどり着いたのはロッカー。


「美彩ー早いよー。」


「ご、ごめん!何であたし、走ったんだろ。」


優の笑顔が、あの優しい笑顔が、頭から離れない…。


ねぇ、涼、あたし、どうしたらいい?
本当に新しい恋をして欲しいって、思ってる?
ねぇ…教えてよ…。


「どうしたの?」


「あたし、優に惹かれてる。でも、やっぱ怖くて、なんか、もう、どうしたらいいのか…。」


「まず、自分の気持ちを、ちゃんと確かめてみたら?本当に好きなら、怖い気持ち、無くなるんじゃない?」


「…梓姫、ありがとう!さすがあたしの親友♪」


「照れるんだけど。」


「可愛い。」


梓姫が、怒りかけた瞬間、聞き覚えのある声がした。


「おっ!優と同クラの美彩ちゃんと梓姫ちゃんじゃん!どうしたの?」


あっさっき瑠菜がどうとか言ってた人。
どうやら、優があたしたちのことを話したらしい。


「なんでもないよ。」


「そっか。あっ自己紹介するね。俺、優の幼なじみの間宮奏太。ちなみに3年3組。」


「奏太君。」


「そっ。よろしくな。」


奏太君は弾ける笑顔を見せた。


「よろしく。」