もう午前中の授業が終わる。午後からはしっかり出たい。なので廊下を走っている。

 曲がり角で女子が突然飛び出して来た。

「きゃっ」

 当然ぶつかってしまう。女子はとても女子らしい声をあげ、その場に蹴躓いた。

「あっごめんなさいー!!」

 僕が大声を出してしまう。それに女子は驚いた表情を見せた。

「「あっ」」

 女子と同時に言ってしまって思わず口を押さえる。

 なんだって彼女がここにいるのだから。

「葵…さん」

 僕は目を反らした。彼女、長崎 葵は照れくさそうな顔をした。

「石川君…こんにちは」

 葵さんは優しい笑顔で言う。低い位置で結んだツインテールがよく似合っている。

「どうしてこんな時間に?」

 僕は顔をかきながら言う。

「それは石川君も同じでしょう?」

 葵さんはまた笑う。

 はっきり言おう。

「どうしたの?」

 僕は葵さんが好きだ。